月明り
空に浮かぶ一つの満月
その月明りが照らす一つの古城
草臥れた姿にやわらかい月明りが映る
古城のバルコニーに見える二つの影、そこに見えるは二人の男女
少年は少女を膝に乗せ、輝く月を見ていた
少女の姿は段々と、そして少しづつ淡い光となっていく
少年は笑っていた
そして思い出す、少し前の過去
(ボクは彼女が、シルビィが好きだった・・・)
(それは昔から・・・そして今も変わらない、変わらなかった・・・)
(けど、ボクはその気持ちを伝えることが出来なかった・・・)
(なんで伝えられなかったのだろう、昔から互いを知っていたからかもしれない・・・)
(なのに・・・彼女は・・・、シルビィはもう・・・)
少年は少女の顔を見た
光に還る彼女の顔は、微笑んでいた
その姿は既に消えかけている
少年は少女の顔から見上げ、もう一度月を見ていた
「月が綺麗だよ・・・シルビィ、君もそう思うだろう・・・?」
少女の姿はもうそこには無かった
ただ淡い光が少年を包んでいただけ
少年は笑っていた
絶えず涙を流しながら・・・
少年の目には月がぼんやりと輝いていた
堕ちゆき、日が昇るまで
月は少年を照らし続ける・・・
挿絵集(皆様サンクス!)
作者:ういんぐ様